広がりつつある耐震診断結果の公表について その1


公共性の高い大規模な既存不適格建築物について、耐震診断を行った結果が、昨年(平成28年)末頃から続々と公表されてきています。

耐震改修促進法の平成25年改正は、耐震診断と報告、公表の義務付けを一つの目玉としていました。

具体的には、不特定多数が利用する学校・病院・商業施設等の用途で、かつ、規模が一定規模以上のもの(例えば、病院、百貨店、旅館等は階数3以上かつ5000㎡以上)については、「要緊急安全確認大規模建築物」として、耐震診断を行い、結果を所管行政庁(都道府県または市)へ報告しなければなりません。

一方、行政庁においても、報告された結果を公表しなければならず、報告を行わない所有者等に対しては、必要な指導・助言、指示を行うこととなっています。
(同じく義務化された「通行障害既存耐震不適格建築物」については、その2で後述します。)

 

改正法にて行政庁への報告期限とされたのが平成27年末であったために、対応の早い、主に地方都市の県や市などは、平成28年の11月頃から公表を開始しています。
最近「**県の大規模建物*棟で倒壊・崩壊の危険性」などという報道が目立つのは、そうしたタイミングからです。

国や地方公共団体等が所有する建物や、URの賃貸住宅等については、従前から耐震診断の結果や耐震化の進捗などが報告されていましたが、民間所有の建物について耐震診断結果が公表されるというのは、今まであまりなかったことです。

公表によって財産価値や営業、社会的信用にも重大な影響を及ぼすため、本来は自由である私的財産の処分権、私人の営業に対し、公共の福祉による強力な制限をかけることになるからです。

そのため、高い公共性や想定される大地震時の被害の大きさ等を考慮し、対象を前述のような一定の用途・規模に限定しています(法改正時の見通しでは、対象は約4000棟と言われていました。日本建築防災協会・耐震支援ポータルサイトQ&Aより)。

 

実際に公表を開始した行政庁はまだ一部ですが、以前より危惧されていたとおり、古い商業施設や大規模旅館などで耐震性の不足が明らかとなっています。

また、耐震不足の報告に際しては、耐震化の予定についても報告しなければなりませんが、耐震化の目途が立たない場合も少なくなく、古くから地元で愛されてきた百貨店やホテルが、閉館したり、規模を縮小するという報道も目立ちます。

 

こうした具体的な事例や各行政庁の対応について、その2につづきます。