広がりつつある耐震診断結果の公表について その2

 

公共性の高い大規模既存不適格建築物の耐震診断結果の公表は、大都市圏を除く地方を中心に昨年11月頃から順次、行われていますが、早くも具体的な影響が出始めています。
市民会館や老舗ホテル、百貨店の閉館や、規模縮小などです。
(この点について、東日本大震災から6年が経過した3月12日(日)、日本経済新聞は一面トップで具体的な事例を挙げて報じました。)

現時点で把握しているものだけで、東北、四国、甲信越、北陸、中国、九州の一部を除く地域、静岡で、民間所有を含む、耐震診断促進法に基づく公表が行われています。

公表された結果は、都道府県・市のホームページで確認できます(「要緊急安全確認大規模建築物の耐震診断結果一覧表」などと表記)。ただし、そこへのアクセスや表の記載が不親切なものが多く、普通の人は途中で挫折することが多いと思われます。

そのため、地方紙などでは、施設名の一覧表を作成して掲載しているところもあります。これでは営業への影響は避けられないでしょう。

施設を所有する企業は、耐震化の目途が立たない場合、公表に先んじて閉館を決めてしまうようです。また、「耐震補強の予定中」とされているものでも、補強に至らずに閉めてしまうものが出てくると予想されます。

 

耐震不足の数と割合の多さで目立つのは、静岡、大分、群馬、栃木、石川、など。いずれも、古い大規模温泉街を抱えている地域です。

公表の対象となる建物は全体のごく一部ですが、地域を代表し、昔からランドマークとなってきた建物に「危険」のレッテルを貼られることは、町全体に甚大な影響を与えるものと思います。

マイナスの影響が懸念されるのはもちろんですが、永らく放置されてきた安全の問題を、地方の政治や地域経済全体から考え直すきっかけにすることはできないでしょうか。
対象とならない中・小規模建物や、対象建物が存在しない地域においても、これを機会に考えていく必要があると思います。

 

一方、大都市圏で結果を公表した行政庁は、執筆時点(3月2日)では広島などわずかにとどまります。

「不正確な情報が公表されることを防ぐため、報告内容は丁寧に精査する必要があります。このため、とりまとめには一定の期間が必要になります。」(神戸市の例)という理由は重々理解できますが、そうなると東京や大阪などは、一体、いつになるのでしょうか。

※追記:3月17日、横浜・川崎を含む神奈川県内の結果が公表されました。

なお、東京都は、同時に、避難や緊急輸送の通行を確保するための「特定沿道建築物」(耐震診断促進法における要安全確認計画記載建築物)の耐震化を進めており、その点の進捗については開示しています。→ 東京都耐震ポータルサイト

平成28年末の段階でも、環七から内側では、耐震化率が8割未満の箇所が多くなっています。
つまり、所々で建物が倒壊して、道路を封鎖しまう可能性が高い、ということです。

個々の建物の診断結果の公表は、まだ行われておりませんが、対象となる特定沿道建築物は、建物が倒壊した際に道路に影響が及ぶか否かから判断され、規模・用途は問われないため、前述の公共・大規模建築物とは異なる配慮が必要となると思われます。

 

耐震性だけが建物の価値ではなく、古い建物の良さは大事にしたい。
また、新耐震が全てではなく、旧耐震でもバランスよく安全な建物も存在します。

しかし、耐震性が著しく不足した建物の表面だけを美しく整えて、商売に利用し、一方で利用者が危険性に気づかないことは、やはり問題であり、そろそろ改善されるべきなのではないかと思います。

特に、一般消費者が売買する不動産に関しては、耐震性不足がどれだけ理解がされているのか疑問です。
リノベ流行りはよいですが、マンションなど、早く手放した者勝ちというババ抜きのような売買が行われていないでしょうか。

 

耐震化の問題は、引き続き考えていきたいと思います。