建設関係法務

建築・土木の施工、設計、不動産開発等を行う建設会社が遭遇する、発注者、設計者、下請、近隣住民等との民事上の問題、建設業法、建築士法、建築基準法等に関連する問題、行政対応等について、問題解決、リスク回避、業務支援等を行います。

建設会社特有の法律問題

建設会社の事業の柱は、建築や土木工作物の完成を請け負い、工事を行うことです。
発注者との関係では、請負契約に基づき、完成引渡義務、瑕疵担保責任を負っていますが、同時に、作業員や周辺住民らとの関係では、工事の安全を確保する義務を負っており、特に、元請の監督責任は重いと解されています。
さらに、完成した建物等に関しては、発注者のみならず、その後の所有者や住人、利用者に対しても、建物等の基本的な安全性についての責任を負っているといわれています。
民事責任だけを挙げてみても、建設会社の責任は、このように多方面、多岐に渡ります。

一方、建設会社や建設工事に対しては、建設業法、独占禁止法、労働安全衛生法、環境関連法など、様々な公法上の規制が課されています。これらの規制は、建設工事特有の重層的下請け構造から生じ得る契約、品質、安全等に関する問題、周辺や環境に与える影響、さらには、歴史的に様々な問題を抱えて発展してきた建設業の健全な育成・発展等を考慮したものです。
さらに、工事を行う建築物は建築基準法等の規制を受けていますので、完成させる建築物が建築基準法に適合していることは、請負契約の履行において重要な意味をもっています。

建設会社においては、一般企業で通常生じる法的問題に加え、以上のような特有の法的問題に対処していく必要があります。
なお、多くの建設会社では、社内に設計部門を設け、設計・監理業務を行っていますが、設計・監理業務に関する法的問題については、設計関係法務をご参照下さい。

民事紛争

建設会社特有の民事紛争では、次のような請求・論点が多くみられます。

  • 発注者との紛争:瑕疵、瑕疵に関する不法行為、工期遅延、追加工事代金請求、解除・出来高算定、等
  • 協力会社間の紛争:瑕疵、報酬・代金請求、解除・出来高算定、安全配慮義務違反、等
  • 第三者との紛争:瑕疵に関する不法行為、周辺住民からの工事差止・損害賠償請求、事故に関する不法行為、等

公的規制への対処

建設業・建設工事に関する規制

社内のコンプライアンス体制の構築が重要となります。
建設業法に関していえば、契約内容と契約書の確認の手順、技術者配置に対応するための人事が重要ですし、現場の法令・規制の遵守を周知徹底させるためには、社内教育などが考えられます。
また、違反があることが判明した場合には、行政処分を考慮し、取り急ぎどのような対処を優先すべきかを検討する必要があります。

建築物等に関する規制

建築物等に関する規制については、本来、確認申請等の手続きを経た設計図書どおりに施工している限り、問題が生じない建前ですが、昨今、事後的に確認済証が取り消されるなどの事態が少なからず発生しています。
仮に工事中や工事後に違反が発覚した場合は、発注者に対する民事上の法的責任(契約責任)は別として、事実上、速やかな是正に向けて対処せざるを得ないケースが多いものと思われます。

建設会社の危機管理

建設会社は、地域や社会、企業、集団にとって大きな存在となる建物等を作り出す者であり、経済的にも大きな活動を行っていることが多いため、社会からの期待が大きい一方で、何か問題が生じた際には、強い批判にさらされるという問題があります。

例えば、過去に施工した建物に安全上の問題(例えば、重大な瑕疵、構造設計ミス等)が発覚した場合、設計者と連携し、安全性の検証(緊急性を要するものか否か)や是正措置、顧客や行政への説明など、速やかな対応が求められます。
昨今では、外部の第三者による委員会を設置するケースも増えています。当事務所も、建築担当の外部委員として調査、報告書の作成等に参加しております。

また、建設現場での事故も度々発生しています。建設現場等で事故が発生した場合、労働安全衛生法違反や業務上過失致死傷の罪に問われることがあります。
さらに、談合や贈収賄といった刑事事件も、少なくはなりましたが、未だ発生しています。
刑事手続の対応のみならず、事故や事件に関し、顧客や社会に向けてどのような説明や報告を行うべきか、という点が、その後の企業活動の継続に際し重要になります。

一方、建設会社は、自然災害の発生時に、最も社会に対し貢献できる能力を有している存在だと思います。
度重なる大地震の発生で、企業活動をいかに継続するかという点(BCP:事業継続計画)が注目されていますが、今後も更なる広がりと建設会社の活躍を期待しています。

コラムはこちら