平成30年 年頭のコラム

本年(平成30年)、当事務所は、以下の3つの点(+番外)に注目しています。
これらの問題についても、依頼者や業界、社会全体のお役に立っていきたいと思いますので、本年も宜しくお願い致します。

① 建築ストック問題(に対応する基準法改正)

既存建築物については、空き家を含めた有効活用と、安全性の確保というそれぞれの側面で、引き続き問題解決に向けた取り組みが続いていくと思われます。
空き家問題は社会現象として深刻化が避けられませんし、安全性の問題については、従来の巨大地震対策という点に加えて、ここ1年ほどの間に頻発した大規模火災により、より強い危機感を持たざるを得ません。

昨年後半から、国交省の諮問を受けた建築基準制度部会が、具体的な制度見直しのあり方の検討として、既存ストック活用の為の基準法改正(単体規定・集団規定の合理化)を議論しています。
注目したいと思います。

② 民法改正

平成29年6月に交付された改正民法(債権法)は、2020年4月に施行されることが決定しています。
あと2年と少々です。
改正に対する学者や実務家の議論も、具体的なものが出てきました。

ご承知のとおり、請負の分野では、請負独自の規定が廃止されて売買の規定が引用され、無過失責任である瑕疵担保責任については債務不履行責任になるなど、
(少なくとも形式的には)大きな変更がなされます。
四会連合・民間連合等の契約約款の改定を睨みながら、オリジナルの約款類に手を入れるなどの具体的な準備に着手しようと思っています。
スタッフへの周知は改正前の最後の1年に残すとしても、今年中に、その前段階の準備を行えるとよいのではないでしょうか。

③ 建設労務環境の変化(建設業法的視点)

東日本大震災以降の人手不足に加え、社会的課題としての「働き方改革」の波が建設業にも押し寄せて来ています。

一見、経営側にとってピンチのようにも見えますが、建設業界がバブル期以降久々に「売り手」に回っている今でなければ、改革は成し遂げられません。
この先にある景気の落ち込みと労働人口の減少を思うと、このチャンスを生かせない会社に「先」はない、というほどの危機感を感じます。

同様に、下請との関係についても変化は避けられません。
昨年(平成29年)は、平成24年以降課題となってきた保険未加入対策がいよいよ本格化し、法定福利費の見積内訳書への明記について中建審の標準契約約款にも追記がなされました。
発注者・元請の責任が問われる傾向は、より厳しくなると予想されます。

番外「IT」の活用

BIMからドローン・ロボットの登場まで、建築生産現場でのITの活用は、③の労務環境問題の解消と密接なものです。
大手では当たり前のように活用が進んできましたが、導入が進まない中小規模の会社との格差が生じており、普及を阻害する原因として、技術力・資金力の不足以上に、人々の「意識」のハードルがあるように感じます。

住宅や設備のIT化(Iot技術の導入)についても、個人的に100%の賛同をし難い部分はありますが、一つの商機であることは事実です。

こうした問題についても、意識にハードルを設けずに考えていきたいと思います。