既存住宅状況調査技術者講習制度の創設について

平成29年2月3日、「既存住宅状況調査技術者講習登録規程」及び「既存住宅状況調査方法基準」が公布・施行されました。

中古住宅の流通促進を目的とした、既存住宅インスペクションのバージョンアップです。
講習・登録の仕組みと調査方法の基準が、併せて告示化されました(平成29年国土交通省告示81号・82号)。

制度の趣旨

制度創設の趣旨は 、以下のとおりです。

「平成28年3月に閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」において、既存住宅が資産となる「新たな住宅循環システム」を構築するため、建物状況調査(インスペクション)における人材育成等による検査の質の確保・向上等を進めることとしています。

今般、既存住宅状況調査技術者講習制度を創設し、既存住宅の調査の担い手となる技術者の育成を進めることにより、宅地建物取引業法の改正(平成30年4月1日施行予定)による建物状況調査(インスペクション)の活用促進や既存住宅売買瑕疵保険の活用等とあわせて、売主・買主が安心して取引できる市場環境を整備し、既存住宅流通市場の活性化を推進してまいります。」

→ 国交省HP

改正宅建業法との関係

平成30年4月1日施行予定の改正宅建業法では、既存住宅状況調査に関し、次のとおり規定しています。

第34条の2(媒介契約) … 媒介契約締結時におけるあっせん(書面の交付)
4号 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(※)を実施する者のあつせんに関する事項

※ 建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(建物の構造耐力上主要な部分等)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。

第35条(重要事項の説明等)
6号の2 当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
イ 建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要
ロ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況

第37条(書面の交付)… 売買契約締結時における書面の交付
2号の2 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項

今までの「既存住宅現況検査」との関係は?

国交省は、以前、平成25年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を作出し、「既存住宅現況検査」という同様の技術者講習を推奨しておりました。

その以前のバージョンの講習(長期優良住宅化リフォーム推進事業におけるインスペクター講習団体に登録された団体が行う既存住宅インスペクション・ガイドラインに準拠したもの)の修了者(既存住宅現況検査技術者、建築士会インスペクター等が該当)については、「移行講習」という「新規」とは異なる扱いになります。
但し、「建築士」に限ります。 

「既存住宅状況調査」からの展開

耐震化・高断熱化など、既存建物に安心してお金をかけられるようにためには、既存住宅の財産価値を適正に評価し、記録する仕組みが必要だということを痛感します。
公的な仕組みの中での適正な評価・記録であれば、悪循環を解消し、融資にまでつなげることにも光が見えてきそうです。

もちろん、空家問題の解決にも必要な話です。

改正宅建業法が想定する場面と効果

前述の改正宅建業法は、以下のような場面と効果を想定しています。

  1.  媒介契約締結時:宅建業者がインスペクション業者のあっせんの可否を示し、媒介依頼者の意向に応じてあっせん
    → インスペクションを知らなかった消費者のサービス利用が促進される。
  2.  重要事項説明時:宅建業者がインスペクション結果を買主に対して説明
    → 建物の質を踏まえた購入判断や交渉が可能になる。
    → インスペクション結果を活用した既存住宅売買瑕疵保険の加入が促進される。
  3. 売買契約締結時:基礎、外壁等の現況を売主・買主が相互に確認し、その内容を宅建業者から売主・買主に書面で交付
    → 建物の瑕疵をめぐった物件引渡し後のトラブルを防止できる。

 技術者は「建築士」に限るという点

既存住宅状況調査技術者講習を受講できるのは、一級、二級、木造の各建築士に限られます。

建築士の新たな活躍の場面となることが期待される一方、建築士の既得権益だの「食いぶち」確保だという批判も聞かれます。

しかし、既存の改修は、設計でも施工でも、確認関係においても、新築以上に難度が高く、法的トラブルも非常に多いところです。
必要最小限の技術・知見を有するものとして建築士制度と連動させることは、合理的かつやむを得ないと思います。

調査方法基準について

既存住宅状況調査の方法については、基準として告示化されています。

既存住宅の状況調査においては、客観的な状況を全て把握することは不可能ですので、依頼する側の期待と受託する側の義務をすり合わせる意味で、こうした基準が重要となります。

また、後に調査の見落としが発覚した場合には、調査技術者の債務不履行責任を判断する基準ともなります。

加えて、品確法の告示と並んで建築紛争の判断基準として用いる余地もあると思います。

 

既存住宅の有効活用⇒新築の減少は避けられない以上、設計者や施工者も、既存をどう活かすか、という点で技術力の向上を図らなければなりません。
事業に当たっては、決して既存住宅を軽んじることなく、新築分野以上に経験値の高い技術者を投入いただきたいところです。